タイヤの扁平率とは?計算方法や違いによる変化をわかりやすく解説

タイヤの扁平率は、乗り心地や性能に大きな影響を与えるほか、自動車のカスタマイズとして見た目の変化にも関わります。扁平率を変えることによって、どのような特徴が現れるのでしょうか。
この記事では、タイヤの扁平率について、基本的な知識から違いによる変化などを詳しく解説します。扁平率を変える際に注意しておきたい点や質問もまとめているので、タイヤを選ぶ際の参考にしてみてください。
タイヤの扁平率とは

タイヤの扁平率は、タイヤの幅に対する高さの割合を示す数値です。タイヤのサイドウォール(側面)の高さをタイヤ幅で割った数値を百分率(%)で表しています。
扁平率が高くなるとタイヤのサイドウォールは厚くなり、低くなると薄くなります。扁平率が低いタイヤは見た目がスポーティといわれ、ブレーキ性能やコーナリング時の安定性を高める一方、乗り心地が硬くなる特性を持つことが特徴です。扁平率が高いタイヤはその逆で、乗り心地は柔らかく燃費も向上する傾向にありますが、コーナリング時に不安定になったり、タイヤの寿命が短くなったりしやすいでしょう。
自動車メーカーは、車種ごとに適した扁平率を設定し、走行安定性と乗り心地のバランスを取っています。一般的な乗用車では55から65程度の扁平率が採用されることが多いです。
扁平率の見方
扁平率は、タイヤサイズ表記の中に含まれる数値で確認できます。例えば、「195/65R15」という表記の場合、65が扁平率を表しています。タイヤの幅が195mmで、その65%がサイドウォールの高さになるのです。
タイヤサイズの表記は世界共通の規格となっており、メーカーに関係なくほとんど同じ見方で確認が可能です。最近の車両では、扁平率40以下の低扁平タイヤを採用するモデルも増えてきています。
扁平率の計算方法
扁平率は以下の計算式で求められます。
サイドウォールの高さ ÷ タイヤの幅 × 100 = 扁平率
実際の計算例として、タイヤの幅が195mm、サイドウォールの高さが126.75mmの場合、126.75÷195×100=65となります。タイヤ交換時やカスタマイズを検討する際、このように計算して求められることを覚えておきましょう。
扁平率を上げる・下げるとは

タイヤの扁平率を変更することで、車の見た目や乗り心地、燃費などを変えられます。扁平率を上げることを「インチダウン」、扁平率を下げることを「インチアップ」といいます。具体的に説明していきましょう。
扁平率を上げる「インチダウン」
ホイールを小さくしてタイヤの側面を高くし、扁平率を上げることを「インチダウン」と呼びます。扁平率を上げることで、乗り心地の向上や燃費の改善が期待できます。
インチダウンすると、タイヤの接地圧が下がることで雪道での走行安定性が向上するため、冬用タイヤへの交換時によく採用される方法です。また、タイヤを小さくすると価格も抑えられるため、高額になりがちな冬用タイヤを安価で購入できるというメリットもあります。
扁平率を下げる「インチアップ」
ホイールを大きくしてタイヤの側面を低くし、扁平率を下げることを「インチアップ」と呼びます。見た目がスタイリッシュになるので、スポーツカーやカスタムカーで採用されるケースが多いです。
インチアップされたタイヤは厚みが少なく空気容量が減少するため、空気圧の変化に敏感になります。通常のタイヤと比べて同じ量の空気が抜けた場合でも空気圧が大幅に低下し、バーストのリスクが高まるのです。安全な走行のために定期的な空気圧点検や、長距離走行前の確認が必要になるでしょう。
扁平率を上げた場合(高扁平率)の特徴

高扁平率のタイヤにした場合、乗り心地や経済性など実用的な面での利点が多く見られます。そのような特徴から、高扁平率タイヤは一般的な乗用車やファミリーカーでよく使用されています。具体的な特徴は次の通りです。
- 乗り心地が良くなる
- 燃費が向上する
- 比較的安価で購入できる
- コーナリング時の安定性が低下する
- タイヤの寿命が短くなりやすい
それぞれ説明していきましょう。
乗り心地が良くなる
扁平率の高いタイヤはサイドウォールが高いため、路面からの衝撃を吸収しやすくなります。段差や凹凸を通過する際の振動が軽減され、快適な乗り心地を実現できるのです。
また、高扁平率タイヤは、高速道路での走行時に振動や騒音を抑制する効果があります。悪路での走行時にも衝撃を緩和し、車体への負担を軽減します。
燃費が向上する
高扁平率タイヤは転がり抵抗が少なくエネルギーロスが減少するので、結果として燃費の向上につながります。経済的なメリットが得られるだけでなく、環境にも優しい選択肢といえるでしょう。
燃費の改善効果は走行条件や運転スタイルによって変動しますが、市街地走行では5~10%程度の燃費向上が期待できるといわれています。
比較的安価で購入できる
タイヤの扁平率を上げると、購入時の費用負担を抑えられるメリットもあります。インチダウンをするとタイヤの幅が細くなるため、スタッドレスタイヤなどの高額商品でも価格を抑えることが可能です。
コーナリング時の安定性が低下する
タイヤの扁平率を上げるとサイドウォールが変形しやすいため、急なコーナリング時に安定性が低下します。そのため、スポーティな走行を好むドライバーにとっては、デメリットになる可能性があります。
高速でのコーナリングや急なハンドル操作時には、とくに注意が必要でしょう。場合によってはドライビングテクニックの調整や、慎重な運転が求められるかもしれません。
タイヤの寿命が短くなりやすい
高扁平率のタイヤではサイドウォールの変形が大きいため、タイヤの劣化が進みやすくなります。定期的なタイヤのチェックと適切なメンテナンスが必要です。空気圧のチェックやタイヤローテーションを定期的に行うなど、安全に配慮しましょう。
扁平率を下げた場合(低扁平率)の特徴

低扁平率のタイヤは、見た目をスタイリッシュにさせたいときや、スポーティな走行性能を重視する場合に選ばれます。見た目の変化だけでなく、走行性能にも大きな影響を与えることが特徴です。具体的には次のような特徴があります。
- 見た目がスポーティになる
- ブレーキ性能が向上する
- コーナリング時の安定性が増す
- 燃費効率が下がる
- 乗り心地が硬くなる
それぞれ説明していきましょう。
見た目がスポーティになる
扁平率を下げると、大径のホイールを目立たせられるため、スポーティで迫力のある印象になります。そのような理由から、高級車やスポーツカーでは多く採用されています。車両の全体的なシルエットも引き締まって見え、カスタマイズの定番アイテムとして人気です。
ブレーキ性能が向上する
タイヤの接地面積が広がり、路面との接触が安定することでブレーキ性能が向上します。高速走行時でも制動力が増し、安全性が高まるでしょう。スポーツ走行時の急制動にも安定して対応できる特徴があります。
また、サーキット走行など、高負荷のブレーキングを繰り返す場面でも効果を発揮します。雨天時でもブレーキング性能が向上し、より安全な走行が可能です。
コーナリング時の安定性が増す
サイドウォールの変形が少ないため、コーナリング時の安定性が増す特徴があります。高速でのカーブ走行時にも安定性を保ち、スポーティなドライビングを楽しむこともできるでしょう。路面からの反応が素早く伝わるため、ハンドリングの正確性が向上し、走行ラインを取りやすくなります。
ワインディングロードやサーキット走行など、連続したコーナーが続く場面や高い操縦性がお求められる場面で効果を実感できます。
燃費効率が下がる
扁平率を下げることでタイヤの接地面積が増え、転がり抵抗が大きくなり燃費が悪化する傾向があります。さらに、インチアップに伴いホイールサイズが大きくなると重量も増すため、燃費性能はさらに低下する可能性が考えられます。
とくに、高速道路では空気抵抗の増加により燃費効率の低下は避けられないでしょう。経済性を重視する場合は、この点も注意が必要です。
乗り心地が硬くなる
タイヤの扁平率を下げると、タイヤの側面(サイドウォール)が薄くなります。これにより、路面の衝撃を吸収する能力が低下し、乗り心地が悪化します。タイヤのサイドウォールは、サスペンションとともに衝撃を和らげる役割を持ちますが、扁平率が低いタイヤは硬く、変形しにくいため、路面からの振動や衝撃が直接車体に伝わりやすくなるためです。
段差が多い路面の凹凸を通過する際や、長距離ドライブでは疲労度が増す可能性があることを覚えておきましょう。
扁平率を変える際の注意点

タイヤの扁平率を変えると、車両の特性に大きな影響が出てきます。安全性や法規制の観点から、適切に判断しましょう。代表的な注意点について説明していきます。
タイヤの外径サイズは変えない
扁平率を変更する場合でも、タイヤの外径は変えないようにしましょう。外径が変わると、速度計の誤差や車両制御システムへの悪影響が発生する可能性があります。純正タイヤの外径を基準に、適切なサイズ選択を行いましょう。
空気圧が適正か確認する
扁平率の異なるタイヤに交換した場合、推奨される空気圧も変わることがあります。メーカーが指定する適正値を確認し、定期的な空気圧点検を行いましょう。空気圧のチェックは、タイヤの性能を最大限に引き出すために重要です。走行条件や気温変化による影響も考慮に入れておきましょう。
ロードインデックスを確認する
タイヤのロードインデックス(荷重指数)が車両に適合しているか確認しましょう。純正タイヤよりロードインデックスの低いタイヤを使用すると、重大な事故につながる可能性があります。車両の総重量や積載条件を考慮し、余裕を持った数値のタイヤを選びましょう。とくに大型車やSUVでは、慎重な確認が必要です。
タイヤの扁平率に関してよくある質問

タイヤの扁平率に関して、以下のような疑問を持つ人も少なくありません。一つずつ確認していきましょう。
扁平率を変えても車検は通る?
タイヤの扁平率を変更する際は、車検に通るサイズ変更かどうか確認しましょう。現在の法律では、タイヤサイズを大きく変更すると車検に通らない場合があります。タイヤの外径が標準から一定の範囲を超えて変化している場合は車検を通過しない可能性があるのです。
基本的に、外径が純正と同じであれば車検に合格します。タイヤサイズを変更する際は、車検証に記載された許容範囲内での変更が推奨されています。目安としては、純正タイヤの外径を基準として、その差が上下1%以内に収まるようにするとよいでしょう。
扁平率を変えるとスピードメーターの誤差が出る?
タイヤの外径に変化がなければスピードメーターへの影響はありませんが、外径が変わった場合は、速度表示に誤差が生じる可能性があります。わずかな外径の違いでも、高速走行時には大きな誤差となって表れることがあるのです。
スピードメーターは、タイヤの1回転あたりの走行距離を基準に速度を計測しています。外径が大きくなると実際の速度より遅く表示され、小さくなると速く表示されます。法規制上の問題だけでなく、安全運転にも影響を与えるので注意しておきましょう。
扁平率の変化で自動車保険が適用されない場合がある?
極端な改造や不適切なサイズ変更の場合、保険が適用されないケースがあります。保険会社に事前確認しておくと安心でしょう。とくに、事故時の保険適用に影響する可能性があるといわれています。改造の程度や内容によって保険の取り扱いが異なることがあるので、覚えておきましょう。
タイヤの扁平率について知っておこう
タイヤの扁平率について、数値の確認方法やインチアップ・インチダウンの違いなどを説明しました。タイヤの扁平率は、車両の性能や特性に大きな影響があります。用途や優先する性能に応じて、適切な扁平率があることを確認しましょう。変更を検討する際は、メリットとデメリットを十分に理解し、安全性を最優先にした選択が重要です。
扁平率の変更は、見た目の印象だけでなく、乗り心地や運転性能に影響を及ぼします。正しい知識を持ち、適切にタイヤ選びを行うことが、安全で快適なカーライフの実現につながるでしょう。