スタッドレスタイヤを夏に履きつぶしても大丈夫?リスクと寿命を徹底解説!

冬に使用していたスタッドレスタイヤの性能が落ちてきたら、夏に履きつぶしても大丈夫なのでしょうか?そこで、本記事では、スタッドレスタイヤを夏に履きつぶすリスクや寿命を見極めるポイントを解説します。
スタッドレスタイヤの履きつぶしとは?

スタッドレスタイヤの夏の履きつぶしとは、冬に使用してから春になってもノーマルタイヤに交換せず、夏から秋に寿命を迎えるまで使用しつづけることです。コストを削減するための手段ですが、タイミングや方法に気をつけなければなりません。
理由
春から夏、秋にスタッドレスタイヤを履きつぶそうとする理由は、コストの削減です。
スタッドレスタイヤの溝が残り少なくなると、次の冬場に雪道や凍結路面で使用できなくなり、買い替えなくてはなりません。そこで、冬に使用できないスタッドレスタイヤを春から夏、秋にかけて履きつぶすことで、ノーマルタイヤを購入する費用を削減しようと考えるのです。
スタッドレスタイヤを履き続けることで、ノーマルタイヤとの交換費用も削減できます。
タイミング
スタッドレスタイヤを履きつぶすタイミングは、プラットホームが露出したときです。
プラットホームはスタッドレスタイヤ特有のサインで、溝の深さが新品の50%以下になったことを知らせます。溝の深さが50%以下になると、雪道や凍結路面で十分なグリップ力を発揮できません。
したがって、冬の終わりにプラットホームに達した場合に、春から夏、秋にかけてスタッドレスタイヤを履きつぶす流れになります。
方法
スタッドレスタイヤを履きつぶす方法はシンプルで、冬に装着したスタッドレスタイヤを春になってもノーマルタイヤに交換しないで、走行を続けます。
ただし、ノーマルタイヤと同様に、定期的な空気圧の測定・調整が必要です。スタッドレスタイヤのゴムは、冬の低温環境に合わせてノーマルタイヤよりも柔らかく、夏の高温環境では劣化や摩耗がしやすくなります。
春から夏、秋にかけてスタッドレスタイヤを履きつぶす際でも、法令に基づいてスリップサイン(溝の深さが1.6㎜以下※1)が露出した状態では走行できません(※2)。
※1参照元:国土交通省「道路運送車両の保安基準」(10ページ)(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/B003.pdf)
※2参照元:e-GOV法令検索「道路交通法」(第62条)(https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_3-Se_12)
スタッドレスタイヤを夏に履きつぶすリスク

コストを削減するためにスタッドレスタイヤを夏に履きつぶそうとすると、走行性能の低下や事故の危険性、燃費の悪化といったリスクが伴います。夏の履きつぶしは、安全運転とコストパフォーマンスの観点からおすすめできません。
ドライ・ウェット路面に適していない
スタッドレスタイヤは低温環境(冬の雪道や凍結路面)に合わせて設計されているため、夏の高温環境(ドライ・ウェット路面)に適していません。
スタッドレスタイヤのゴムはノーマルタイヤよりも柔らかく、細かい溝が刻まれています。ドライ・ウェット路面を「プラットホームが露出したスタッドレスタイヤ」で走行すると、グリップ力を発揮できず、制動距離が長くなってしまいます(※3)。また、ハイドロプレーニング現象(タイヤと路面の間に水の膜が発生)で、スリップを引き起こしやすくなります。
したがって、スタッドレスタイヤを夏に履きつぶす際は、走行中の危険な場面で急ブレーキをかけてもすぐには止まれないのです。
事故を引き起こす危険性がある
夏のドライ・ウェット路面でスタッドレスタイヤが走行性能を発揮できなくなると、追突や接触などの事故を引き起こす危険性が高くなります。
たとえば、夏のドライ路面で急ブレーキを踏んでも、スタッドレスタイヤの制動距離は長くなるため、すぐに止まれないと前方車両に追突してしまうリスクがあります。また、夏のウェット路面でハイドロプレーニング現象が起きて、カーブでスリップしてしまうと、ガードレールに接触しやすくなるのです。
なお、スタッドレスタイヤは夏の高温環境に弱いため、劣化・摩耗しやすく、空気圧を適正に保っていないとバースト(破裂)する危険性もあります。
燃費が悪くなる
夏のドライ・ウェット路面でスタッドレスタイヤを履きつぶす際は、ノーマルタイヤよりも燃費が悪くなります。なぜなら、スタッドレスタイヤのゴムがノーマルタイヤよりも柔らかいためです。
ゴムが柔らかいほど地面に接する面積が増え、タイヤの転がり抵抗が大きくなるため、車を動かすためにより多くのエネルギーが必要になります。つまり、同じ距離を走行する場合でも、スタッドレスタイヤのほうがノーマルタイヤよりもガソリンを消費するのです。
スタッドレスタイヤを夏に履きつぶして、ノーマルタイヤの購入・交換費用を削減しようとしても、ガソリン代が高くなってしまうリスクがあります。
スタッドレスタイヤの寿命を見極めるポイント
無理にスタッドレスタイヤを夏に履きつぶして事故のリスクを高めるよりも、寿命を見極めることが重要です。冬場に安全運転を保証するために、プラットホームやスリップサイン、ゴムの劣化状態などのポイントをチェックしましょう。
プラットホーム
スタッドレスタイヤ特有のサイン(下の写真の赤枠部分の突起)が、プラットホームです。残りの溝が新品の50%になったことを知らせます。

プラットホームは、タイヤ側面の刻印(↑)の延長線上にあります。タイヤの表面に出てきたら走行性能が低下しているため、冬の雪道や凍結路面では使用できません。
プラットホームが露出したら、スタッドレスタイヤとしての寿命を迎えています。冬場の安全運転のためには、買い替えが必要です。
スリップサイン
スタッドレスタイヤに限らず、ノーマルタイヤやオールシーズンタイヤにもスリップサインがあります。残りの溝さが1.6㎜であることを知らせるサイン(下の写真の赤枠部分の突起)です(※4)。

法令に基づいて、スリップサインが露出したタイヤで走行することはできません(※5)。スタッドレスタイヤを春から夏、秋にかけて履きつぶそうとしても、スリップサインが露出しているなら法令違反です。
スリップサインが露出したら、スタッドレスタイヤとしてだけではなく、タイヤとしての寿命を迎えています。
※4参照元:国土交通省「道路運送車両の保安基準」(10ページ)(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/B003.pdf)
※5参照元:e-GOV法令検索「道路交通法」(第62条)(https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_3-Se_12)
ゴムの劣化状態
まだ溝の深さが残っていても、タイヤのゴムは経年劣化していきます。ゴムが硬化したり、ひび割れたりした状態では、スタッドレスタイヤが走行性能を発揮できなくなります。
- たとえ未使用でも、製造から3~4年で寿命を迎える
- タイヤ側面に「製造年週」(4桁の数字)が記載されている
- 走行中の傷や紫外線、アスファルトの熱などで、ゴムは劣化していく
ゴムの劣化は、製造年週だけではなく、走行の頻度や環境、保管の状態などによっても変化します。寿命を判断するためには、スタッドレスタイヤの定期的な点検が重要です。スタッドレスタイヤの寿命については、次の記事にまとめてありますので、併せてご覧ください。

スタッドレスタイヤの夏の履きつぶしに関するよくある質問

スタッドレスタイヤを夏に履きつぶそうとする場合は、法令・車検や履きつぶした後の処分方法、新しいタイヤの購入などについて疑問を抱くものです。よくある質問を集めましたので、回答をご紹介します。
法令違反になりませんか?車検に通りますか?
はい、スリップサインが露出していなければ、スタッドレスタイヤを夏に装着しても法令違反にはなりません(※6)。
ただし、溝の深さが1.6㎜以下(※7)になってスリップサインが露出した全てのタイヤは、車検に通りません。スリップサインが露出したタイヤで走行すると、法令違反に問われます。
なお、プラットホームが露出したスタッドレスタイヤでは、雪道や凍結路面を安全に走行できません。グリップ性能が低下し、スリップや立往生などを引き起こす危険性があるからです。
※6参照元:e-GOV法令検索「道路交通法」(第62条)(https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_3-Se_12)
※7参照元:国土交通省「道路運送車両の保安基準」(10ページ)(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/B003.pdf)
どうやって処分したらいいですか?
スタッドレスタイヤが寿命を迎えたら、以下の業者に廃タイヤとして引き取ってもらいます。廃棄物処理法に基づいて「適正処理困難物」に指定されているため、基本的に自治体は廃タイヤを回収していません。
廃タイヤを回収できる業者 | タイヤを販売する店舗 (タイヤ販売店・カー用品店 ・ガソリンスタンド・整備工場 ・自動車販売店など) | 不用品回収業者 |
回収の費用 | 1本250~500円程度 | 1本500-1000円程度 |
なお、溝の深さが残っている場合は、リサイクルショップに中古タイヤとして買い取ってもらえる場合もあります。
※8参照元:日本自動車タイヤ協会「廃タイヤの適正処理について」(7ページ)(https://www.jatma.or.jp/docs/environment_recycle/manual2021.pdf)
どのように新しいタイヤを選んだらいいですか?
販売価格だけでなく、保有する車種や走行環境、予算、信頼できるタイヤメーカーなどから総合的に検討してください。
たとえば、来シーズンも雪道や凍結路面を頻繁に走行する予定なら、春から秋はノーマルタイヤを使用し、冬に新しいスタッドレスタイヤに履き替えます。積雪量が少ない地域や平均気温が高い都市部などであれば、オールシーズンタイヤも選択肢です。
スタッドレスタイヤの選び方については次の記事にまとめてありますので、併せてご覧ください。

スタッドレスタイヤは寿命を迎えたら交換しよう
溝の減ったスタッドレスタイヤを夏に履きつぶそうとしても、事故の危険性や燃費の悪化などのリスクが伴います。冬場の使用に合わせて設計されているスタッドレスタイヤが寿命を迎えたら、安全運転を第一に考えて新しいタイヤに交換しましょう。
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